北杜夫さん、亡くなる

今日、25日に作家の北杜夫さんが亡くなったことが報じられました。
私にとって、北さんは、いわば大人の小説への扉を開いてくださった恩人です。

朝日新聞に連載された「奇病連盟」が、いわば大人の小説への入門編になりました。

躁と鬱をある程度周期的にくりかえす、躁鬱病(いまでは双極性ナントカというらしいですが)
という病気を患っていらっしゃって、その病状が作風に大きな影響を及ぼしている面があったと伺っています。
たしかに、躁病状態のときには、「船乗りクプクプの冒険」とか「奇病連盟」を、ご本人の弁を借りれば「書きなぐった」(全集月報より)そうです。
ただ、北さんご自身も認めていらっしゃるように、「さびしい王様」などの、計算をしてじっくり書かれた作品よりも、こうした「書きなぐった作品」をほめる人も多いようです。
わたし自身、「さびしい」シリーズよりずっとクプクプや、奇病連盟の方が好きで、この2作は繰り返し愛読しています。

もうひとつ、気に入っている「怪盗ジバコ」は、続編も書かれているそうですが、それはまだ読んでいません。

北さんの作品の中には、ユーモアあふれるものが多くて、落ち込んだ時に読むと、気持ちが落ち着くものがたくさんあります。
「どくとるマンボウ航海記」という初期の作品でも、「くだらないこと、つまらないこと、どちらかといえば書かない方がましなこと」を書くことにした、というはしがきの部分から楽しむことができました。
この本も、人生で「つらいな」というときには取り出して、くりかえし読んでいるモノの一つです。

北さんが亡くなってしまったことで、またひとり、「おいしい作家」とよびたい小説家の方がいなくなってしまったな、と思います。

本当にさみしいことです。

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