さよならドビュッシー

思いがけない火事によって、仲の良かったいとこと、祖父を失ってしまった高校生の少女の物語。

自分も全身に大やけどを負ってしまい、意識が戻るまで、何日もかかります。
はじめは、おなかの部分に母親が、指で文字を書いて、現在の状態を教えてくれます。
やがて、目が覚めて、説明を受けますが、状況は悲劇的です。
ピアニストになりたいと思っていましたが、指をあげて鍵盤をたたくだけでも、拷問のような時間を乗り越えなくてはなりません。

もちろんフィクションではあるのですが、このリハビリの苦労ぶりは、本当にうまく描かれていて、感動的です。

ピアノを教えてくれる先生がいます。
岬というこのピアニストが、理想的なリハビリ環境を作ってくれます。
通常の理論とは一味違った考え方に基づいて指導をしてくれるのですが、自分もこうした教授法を考え出すことができれば、と思うほど見事なものでした。

ある分野の常識からかけ離れた指導法といわれるものは、「何のためこのような作業が必要なのか」を考え直す必要があります。
英語の世界でも同じことは言えるな、と強く感じました。
そういう意味で、作者の中山七里というひとは、ピアノや音楽教育についてずいぶん勉強されたのだろうと思います。
また、努力の方向性や、どういうときにどんな励ましがありがたいのか、わかりやすく書かれていて、感心しました。

「さよならドビュッシー」は、推理小説としてのサスペンスを楽しんでもらうために書かれた小説です。
「このミステリーがすごい!」大賞の第8回大賞受賞作であり、見事な構成で書かれていて、先ごろ映画化もされました。

私は、ピアニストという大きな目標に向かって進んで行く少女の熱血物語としておもしろく読みました。このリハビリの大変さを、自分に対する叱咤激励としてもう一度、落ち着いて読んでみたいと思っています。

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