シャーロッキアン、またはホームジアンと呼ばれる人たちがいます。
シャーロック・ホームズ(ここではSHと表記します)の実在を疑わず、コナン・ドイルの作品を正典(カノン)とよぶ人たちです。
彼らは、ドイル作品に描写されたSHにまつわるさまざまな事象を研究し、矛盾を暴き、さらにドイル(=ワトソン)の記述が事実を隠している(!)ことを推理します。
有名なところでは、元タイムの記者であったベアリング・グールドです。
彼は、「ガス灯にうかぶ横顔」という著作で、SH(ドイルではない!)の生涯を描きだしました。
SHの短篇集は、事件が時系列ではなく、あくまでワトソンの選んだ順番に記載されています。
グールドは、これを、いろんな傍証を利用して、時系列に並べ直しました。
そして一つのまとまった伝記として書きおろしたのが上記作品。
これは河出文庫から出されています。
さらに注釈を付けたのが「詳注版 シャーロック・ホームズ全集」でこれはちくま文庫ででていました。(全11巻。現在は絶版のようです)
ブログの「解説マニア」の項目でも書きましたが、ある物語があるとすると、その物語本体を愛するひとと、解説や、時代背景、さらには作家の人生など、物語の周辺情報を熱愛する人とがいます。
前者は、物語そのものは楽しみますが、あまり解説には目を通さない。
パスティーシュ(パロディ)などはもってのほかです。
シャーロッキアンというのは、あきらかに後者でSHという偉大な創作を通じて、それを現実の存在と信じることで、知的な探究心を満足させている人たちなのでしょう。
ある意味で、英語の勉強法にこだわる人たちと似ているのかもしれません