奇病連盟

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「奇病連盟」は、作家北杜夫さんの作品です。
子供の頃、当時とっていた朝日新聞に連載されていて、毎日楽しみにして読んでいました。

山高武平(ぶへい)は準大手製薬会社のサラリーマン。朝起きるのが苦手なフクロウ型の彼は、午前4時にはばっちり目を覚ますヒバリ型の母親と同居して、なんとなく疲れてしまっている37歳の独身男。
武平には、奇妙な病気があって、それは4歩ごとにぴょっこりとのびあがってしまうというもの。
この癖、というか病気のせいで、職場ではピョコリ氏というありがたくないあだ名までもらってしまっている。
ところが、このピョコリのおかげで、彼の運命は大きく変わってしまう。
ある病気にあこがれる大金持ちの道楽で、気持ちが暗くならない奇病の人たちが集まる奇病連盟という会がある。
武平はその会にスカウトされるのだ。

この小説がきっかけで、北さんの大ファンになり、ほとんどの作品を読みあさります。全集が出た折に、月報で氏が、奇病連盟のことを評して、
「わたしが自作の中でもっともキライであった作品で、絶版にしようとさえ考えた」と書いているのを見て、たいへん驚きました。
理由は、「発想はおもしろいが(中略)中途半端なものになってしまった」からだとか。
新聞連載だったため、「書きなぐって、推敲もしなかった」そうですが、見直しもしないで、あれだけのものが書けるのは、逆にすごい!
むしろ、北さんが、自信作としている「さびしい王様」シリーズより、ずっと好きです。

北杜夫さんの全集は揃えましたが、最終的に何度も繰り返し読んだのは、奇病連盟だけです。
自社の宣伝用雑誌の編集をしている武平が妄想する、カバが大きな口を開いて、「カバに食わせるほどのんでも効かない××製薬の薬!」という表紙。あまりにありありと想像してしまい、いまだにデザインが思い浮かぶほど。
今日も、これを書くために引っ張り出してきました。また、読んでみようと思います。

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