僕らが愛した手塚治虫2 二階堂黎人

名古屋に「まんがの虫」という手塚治虫さんのファンを中心としたマンガグループがありました。
中学時代、このグループの代表の方から連絡がありました。
手塚先生が、当時の松坂屋だったか丸栄だったか、百貨店にサイン会にいらっしゃる、というのです。
そこで、前日から代表の方の自宅に泊まり込んで、当日は朝から名古屋駅で手塚先生の名古屋到着を待とう、というわけです。

実際には、情報が錯綜してしまい、名古屋駅での対面はならず、それでもサイン会の後、とある喫茶店で、手塚先生を囲んでお話を伺うことができました。

これをお読みの方がご存じかどうか、今は無き虫プロ商事からCOMというマンガ専門雑誌が出されていました。
それに連載されていた「火の鳥」がとても人気があり、手塚先生の人気がかなり絶頂期のころです。
サイン会も、1時間以上待つことになり、多くの方が手塚先生の本を買われていたはずです。

このときの熱い思い出を思い出させてくれたのが、ミステリ作家であり、以前手塚ファンクラブの会長でもあった、二階堂氏のこの本でした。

たぶん、氏は私よりすこし若い年齢であり、そのためにたとえば先ほどのCOMなどでは私はリアル・タイムで読んでいたのに対して、古本屋で遭遇していたり、とか、若干の違いはあります。
ただ、気まぐれなファンだった私などとは違って、氏はとても誠実にファンとして手塚マンガに向き合っていらっしゃると感心しました。

また、何かが本当に好きな方の書かれた本にただよっている熱気のようなものが、この作品にもあふれていて、わたしも何年か若返ったような気持ちになりました。

マンガに浸った青春時代を送ったことのある方にはぜひとも読んでいただきたい素晴らしい一冊だと思います。

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