森博嗣「すべてがFになる」

1996年に出版されたミステリ小説です。
現在、久しぶりに読み返していますが、初めて手に取った時に感じた、独特の雰囲気は、全く変わりません。

それは、なにか。

一言でいえば、理系ミステリ。

わたし自身は、根っからの文系で、論理性というのは、あくまで後付けでくっついてきている思考法であることがよくわかります。
本質は、感情が支配しています。

たとえば、この本の中で、
「機械にのせて死体を運搬するために、身体の一部を切断した」
という考え方が出ています。

これを感情を交えずに、淡々と論じることができるのは、理系だな、という感じ。

わたしだと、横溝正史の描くところのおどろおどろしい世界が想像されてしまいます。
もっとも、横溝さん自身はロジカルな方で、金田一耕助シリーズが、案外からっとしたイメージなのは、やはり理系的な発想に支えられているからかもしれません。

でも、横溝世界は、基本的には残酷絵巻なのです。

この森さんのミステリには、なぜか、そうした情緒的なものはあまり見えてきません。
この「なぜか」はおそらく、森さんの世界が純粋に理系的な発想の基盤に基づいているからだろうと思います。
不思議な小説なんです。ぜひご一読ください。

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