突然、耳を自分の方に近づけられた経験はありませんか?
わたしたちの声は、小さすぎて聞こえないらしいのです。
これをされると、上がってしまい、かえって声が出なくなる方も多くいます。
日本人同士で話し合っているときにそんなことはまずありません。
どうしてこうなってしまうのでしょう?
その原因の一つは、わたしたちが農耕民族であるのに対し、彼らが狩猟民族であることから来ているように思えます。
農業をする場合、種まきにしても、草取りにしても、話をする相手はすぐそこにいます。
わざわざ大きな声を張り上げて、叫ぶ必要はまったくありません。
むしろ、あまりに大きいと、かえって疎まれてしまいます。
狩りをしている場合、待ち伏せしていて、目の前を獲物が通った場合、別の場所にいる仲間に、何頭が、どういう勢いで通過したのか伝える必要があります。
だとすれば、ある程度、距離の離れた聞き手に対して、声が届くような出し方で発声しなくてはなりません。
こうした文化的な背景から、わたしたちのことばの文化も作り上げられてきたのではないか、と思います。