悪評の高い「論語」の一部です。
章でいうと、17番目の陽貨の部分にあります。
これは、「女子と小人(=下人。身分の低いもの)は扱いづらい。近づけるとなれなれしく無遠慮になるし、離すと疎遠にされたと思って怨むようになる」という意味だと金谷治氏の「孔子」には記されています。
最近読んだ山本七平さんの「論語の研究」によれば、これはかならずしも正しい解釈とは言えないらしい。
当時、「女子」とは身分の低い女性のことで、身分の高い女性のことは淑女といっていた、とのことです。
だとすれば、身分の低い女性や、奴隷などは扱いづらい、ということになり、一般論の女性を指す言葉ではなくなります。
さらに、身分が低い、ということは現在の平等を中心とした考え方とは全く違っていて、教育を身に付ける可能性はゼロに近いし、まして、教養といえるようなものはとてもとても知らなかったであろう、と思えます。
すくなくとも、さまざまな人の考え方に接するような読書などは望むべくもなかったはずです。
論語について書いている人はとても多く、今挙げた金谷さんや、山本さんをはじめ、渋沢栄一や、宮崎定市といった方たちが書いています。
これほど多くの人たちの目を通ってきている「論語」なのに、冒頭の「女子・・」の文章が、取り立ててコメントされることもなくスルーされてきてしまった、というのは、恐ろしいことだと思います。
わたしたちは、自分が気にしていないことだと、目の前に書かれていても気づかないことがあります。
物事を知っていく、ということは、こうしたことに疑問を持って、一つ一つ根源から考え直すことが重要だと思います。