ニューヨークタイムズの科学の欄には、ときどき、浮世ばなれした研究が載りますが、これは、そういう範疇に入るのかどうか。
研究者が、果たして犬が、複雑なことを覚えることができるのか、探求した、というタイトルの記事です。
Once again, science has confirmed the suspicions of dog owners that their beloved pets know more than they are letting on.
(また科学が、自分の愛するペットが、思っているよりいろいろ知っているのではないか、という飼い主たちの疑惑に答えを与えた)
というわけです。
では読んでみましょう。
「うたがいなく、犬は、命令や、物の名前を覚えることができるし、人や場所も覚えられる」
ブタペストの、エトヴァス・ローランド大学のクラウディア・フガーサ教授は犬がもっと複雑な記憶を持っているかどうかを試そうとした、というのです。
訓練で、犬は、飼い主のある行動、たとえば開いた傘にさわる、といった行動を見せます。
つぎに、「やれ!」と命じると、訓練された犬は前脚で、飼い主のしたように傘にさわります。
そこで、訓練者は、犬が見たことのないもの、たとえば、マットの近くにおかれた傘に手で触る、という行動をします。
しばらく犬を、スクリーンの後ろに連れて行ってから、再びマットに戻り、たぶん犬にとっては驚きなのでしょうが、ここで、「やれ!」と言います。
すると、この実験での犬たちは、訓練者がやった行動を忠実に真似をした、と言います。
ただ、この犬たちは、ある程度、言われた行動をするような、トレーニングを既に受けていたことが大きな要因なのかな、と思います。
たとえば、犬がやる気を示さない時、つまり、スクリーンの裏に連れていったら、ごろんと寝てしまった時などには、こうした行動はとらないそうです。
まあ、そうだろうな。
人間には、「挿話的な記憶」というものがあるそうです。
これで、ストーリィを記憶するわけです。
犬にも、それに似た形の「記憶」能力があるようで、それは「挿話的のような記憶」と呼ばれています。
これは、実際にことばで検証しないと、私たち人間の持っている記憶と同じようなものなのか、わからないためらしい。
こうした実験で、どこまでのことが分かるのやら、わかりませんが、アメリカ人はこうした記事がお好きなようで、ニューヨークタイムズでも、ほぼ毎週、サイエンスの欄に登場します。
以前、この欄で書かせていただいた、「嘘をつくと発達する脳の一部がある」という説も、こうした記事からとりました。
考えてみると、「テストをやってもまったくほめないと、学生はあまり勉強に意欲を持たなくなる」といったような学生相手の実験が結構あって、それを実際に実験してみていますから、こうした研究が、彼らは大好きなんですね。
もっとも、実験対象にさせられた生徒で、学習意欲を失った人はどうしてくれるんだ!と思っているような気がします。