大野更紗「困っているひと」

ある日、原因不明の難病を発症した
大学院生女子の、冒険、恋、戦い――。
知性とユーモアがほとばしる、命がけエッセイ!

という宣伝文句が、まさにオーバーではない本がこちら。

これは、たいへんな本です。
金曜日の夜、読み始めて、土曜日の朝には読み終えました。

それまで、エネルギッシュな大学院生だった大野更紗さんが、突如、全身が痛いという奇病にかかり、あちらこちらの病院にかかってもらちが明かず、やむなく東京の某病院に入院。
病状はひどくなる一方で、麻酔をかけないで、身体の組織を切り取るというほとんど拷問のような検査を連日受けていきます。

なにしろ、ほとんど動けない状態なので、大学病院に行って診察を受けるだけでも大変な重労働。
生きる希望もなくなってしまいそうな毎日の中、大野さんは、【絶望はしない】と誓います。

でも事態は決してよくはなりません。

この暗いことばっかりの状況のなかで、ユーモアたっぷりに自分の状態を書いているのは、とてもすごい精神力。

会う人ごとに「ぜひ読んで!」とお勧めしているのが、この本。

わたし自身、数年前に顔面まひを立て続けに2回発症。
はじめは右で、ステロイドを入れたら割と速く動きだしましたが、翌年の2回戦では、身体がステロイド慣れしたらしく、なかなか事態は変化せず、やがてちょっとだけ動くかな?となったときに、ステロイドの注入リミット2週間が過ぎてしまい、通院になるという状況でした。

この時に、はじめてMRI検査を受けて、自分が閉所恐怖症であることを自覚したり、ステロイドの影響で、血糖値が跳ね上がるという体験をしたり、びっくりすることも多かったのですが、大野さんは病気のレベルが違う。

それでもタフに生き抜く彼女の姿には、尊敬の気持ちしか持てないほどです。

まさに究極のエンタメ・ノンフィクションという言葉はこの本のためにあります。

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