わたしは、高校生のころに、当時NHKのラジオで、「英語会話」を放送していらした松本亨先生にあこがれて、何冊か出版されていた表現集を買って読んだり、東京で行われた先生の講演会などに参加していました。
幸い、夏休みに、直接、松本先生から指導を受けることができる、という講座があったため、なんとか父親に頼んで、参加させてもらいました。
この時、先生が担当されていたのが、「英作文」の講義で、参加していた生徒は50人くらいいたのですが、作文ということで、20問ほど、毎回用意されていました。
先生が、生徒を当てていって、板書させる方法なのですが、たいていの生徒さんは、予習する段階で、上の方の問題から準備されるんですね。
1回目の授業で、そのことを知ったので、それからは毎回、後ろから(つまり、1-20の順番で作文があるなら、20→19→18・・という順番で予習することにしました。
もちろん、松本先生の指導を直接受けられるわけですから、全問やっていきたいところですが、中には、終わりまで達成しないこともあります。
そんなとき、19番や20番の問題は、手を上げる生徒がいなくなってしまいます。
でも、最後の方の問題は全部やってありますから、その時には、率先して挙手して、当ててもらう、という寸法です。
たぶん、この時にいた生徒さんたちの中で、名古屋からきていたのはほとんどいなかったと思います。
当時、英語はむしろ苦手な方でしたから、間違えても恥ずかしくなかったし、何と言っても、一生会えないかと思っていた松本先生の授業です。
一分一秒がもったいない!
他に希望者がいない時には、立て続けに手を挙げて、数問当ててもらうこともありました。
おかげで、模範解答以外の「とんでもない」かもしれない、自己流英語を書いてみたり、別の解答も質問してみたり、先生にはご迷惑をおかけしたものです。
でも、そのおかげで、英作文が大好きになりました。
私は、実際に英語を話す機会も少なかったし、話す英語は、まちがえてもあまり注意されない。
それに対して、書く英語では、間違いを指摘してもらえるし、また自分の失敗がしっかり形に残るので、とてもうれしかったものです。
松本先生の言われたことや、口にされた表現を書き取ってみて、(ちゃんと書けていなかったかもしれませんが)小さなダンボール箱ひとつ分くらいの量の、メモを残したほどです。
この下手の横好きの英作文は、このあと、当時出版されていた、松本先生の英作全集(全10巻)とか、そのほか、高校生用の英作文問題集などを、本屋さんで見つけ次第、手に入れて、いろいろ書いてみました。
松本先生の英作文問題集は、無理やり先生の事務所の先生方にお願いして、毎週、添削していただいたり、自分の在籍していた学校の先生にも、別解答なども作って持っていったりしたものです。
たぶん、もし私の力が、その時、身についたとするなら、この時の英作文体験だとおもいます。
わたしが、一番うれしかったのは、英作文の教材は、荷物にならないこと。
薄っぺらな1冊を持っていけば、数日間、数週間は持つし、ノートなどに間違いを書き込むことで、後で調べたりする資料もできることになります。
現在、私は、生徒さんたちに、できるだけ消しゴムを使わないように、と言っています。
これは、消しゴムを使うことで、自分の失敗、つまり今日からわかる、「使ってはいけない英語集」を消してしまうことになる、ということです。
消さなければ、証拠として、こんな英語はだめよ、ということが分かりますから、読み返すだけでも参考になります。
なかなか生徒さんには実行していただけないのですが、わたし自身は、高校以後、訂正用の記述はすべて赤のペンを使っています。
こんな風に英語を書く練習をしてきたおかげで、すくなくとも、新しい英作文の本が出るとすぐに買って、持ち歩いて、自分なりの答えを書いています。そのあと、チェックしておけば、すくなくとも、「またしても」変な表現を使わなくて済みそうだから。
一緒に英作文を書いてみませんか?