「まだらの紐が!」
ここまでおよみいただけば、本作がホームズ物語中、作者ドイルのえらんだベストである「まだらの紐」であることはお分かりだと思います。
前回に続いて、姉が亡くなるところです。
At first I thought that she had not recognized me, but as I bent over her she suddenly shrieked out in a voice which I shall never forget, “Oh, my god! Helen! It was the band! The speckled band!”
There was something else which she would fain have said, and she stabbed with her finger into the air in the direction of the Doctor’s room.
最初は、彼女は私のことが分からないのだ、と思いました。
でも私が彼女の上に身をかがめると、彼女は、わたしが決して忘れることのできない声で、急に叫びました。
「まあ、なんてこと!ヘレン!あれは、紐よ!まだらの紐よ!」
彼女はさらに何かを言おうとしていました。そして彼女は
stabbed with her finger into the air in the direction of the Doctor’s room.
というわけです。
stab というと、とがったもので刺す、というイメージが強いのですが、ジーニアスによれば、動詞として二つ目の意味が「指で示す」というものです。
Oxford Advanced Learner’s Dictionary では、to make a short aggressive or violent movement with a finger or pointed object とあり、指で激しい動きをすることと、指し示すことがあげられています。
例文もあって、She stabbed the air with her fork. (空をフォークで指し示す)
そこで、ここでは、「指で、博士の部屋の方向を指し示した」ということになります。
ちなみにここでのDoctorは、ワトソンではありません。