NHK「実践ビジネス英語」のライターズ・ワークショップ2008年6月号課題で書いてみたものです。
出題を担当されている佐藤昭弘さんは、このコーナーは「日本語の問題文を自然ないい英語」で表現する力を磨く場である、とのべていらっしゃいます。
このことも踏まえて、できるだけメッセージを「英語としてわかりやすい」文を書くようつとめたつもりです。
情報の出し方では少し工夫をしてみました。
コーナーでは、和文が全文掲載されます。
ここでは、読む方が読みやすいように、パラグラフごとに出しました。
そのため、後で出てくる情報が先に英文に表現されていることもあるかもしれません。
ほかにも、和文英訳で期待される文とは違った形の英文になっている面は多いかもしれません。
実際に見ていきます。
(問題1段落)
「お父さん、ごめん。やっぱりダメだった」と、大学受験に失敗した娘が電話をかけてきたとき、どれだけ愛おしかったことか-―。今年、一浪の末、愛娘を志望の大学に合格させた友人は、一年前の不合格の日のことを懐かしそうに振り返った。無念さを隠し切れない娘の声に「今こそオレの出番だ」と、思わず携帯電話を握る手に力を込めてしまったそうだ。
セリフから始めるのは、小説などではよく見られる手法ですが、なかなかの高等技術で、うまく処理しないと、誰がどういう状況で口にしたのかがさっぱり分からなくなってしまいます。
そこでセリフの前に、人間関係など説明しておくことにしました。
実際に書いてみたものがこういう文です。
This is a pleasant memory of one of my friends. He has a daughter who passed a college entrance after one-year preparation.
His daughter called him up one year ago, upon finding her failure. “Sorry, dad, I couldn’t make it.” Her voice was full of chagrin though she worked hard to hide it. At that moment, he confessed that he had realized how much he had loved her. Hearing her, my friend grabbed his phone hard in spite of himself, saying to himself, “Now it is time that I should support you!”
ネイティブの修正は次の通りでした。最初の段落では、memory of がmemory from に。memory of …としてしまうと、「of 以下のことについての記憶」になってしまうようです。
次にwho passed college entrance after one-year’s preparation. 「15分歩いて」という場合にfifteen minutes’ walk といいます。それと同じことでしょう。
2段落。1行目、finding をlearning of に。find はto discover unexpectedly, learn はto become aware of something by hearing about it ですから、learn がいいでしょう。
3行目。she worked をshe had worked に。電話をかける前から努力していたのでしょう。難しいところです。
4行目。he had loved her をhe loved herに。その時愛していた、のではなく、ずっと愛し続けていたから。
5行目。Hearing her がUpon hearing from her に。grabbed をheld に。
saying to をtelling に。Hear だと「聞こえてくる」hear from だと、be contacted by someone, especially by letter or telephone ですからどんぴしゃり。saying to ではutter words のニュアンスが強くなります。そこでメッセージを伝える、という意味合いの強い、telling に変更。
下記のようになりました。
This is a pleasant memory from one of my friends. He has a daughter who passed college entrance after one-year’s preparation.
His daughter called him up one year ago, upon learning of her failure. “Sorry, dad, I couldn’t make it.” Her voice was full of chagrin through she had worked hard to hide it. As that moment, he confessed that he had realized how much he loved her. Upon hearing from her, my friend held his phone hard in spite of himself, telling himself, “Now it is time that I should support you.”