「まだらの紐」から②

「まだらの紐」から②

前回の「まだらの紐」ではスペースがなくなってしまいました。もう一度、前回の分を見てみます。

It is evident, therefore, that if both girls had married this beauty would have had a mere pittance, while even one of them would cripple him to a very serious extent.

this beauty は前回ふれたとおり、「美人」という意味の語ですが、「際立って美しいもの」という使い方のほかに「反語用法」というものがあって、「ひどいもの」といった意味でつかわれることもあるようです。

したがって、「もし二人の娘たちが結婚すれば、このひどい男は、単なるスズメの涙のような金額しか残らなくなる、たとえ、二人のうちの1人であっても、彼を深刻な状態に追い込むことになる」
という訳文になります。

上の段の最後、mere は only と同じ意味ですが、(前回のこの欄では)うっかりmoreと書いてしまいました。すみません。

さて、2行目の最初の語、pittance ですが、a very small amount of money that somebody receives, for example as a wage, and that is hardly enough to live on. 

つまり「誰かが受け取るごくわずかなお金、たとえば、給料として。そして、それは生活するにはとても足らない金額のお金」

ということです。

ここでは「スズメの涙」と訳してみました。

つぎの even one of them would cripple him のところですが、one of them はお分かりの通り、二人いる娘のどちらかでも、ということですね。

cripple というのは、「手足の不自由な」とか「破損した、欠陥のある(装置)」といういみで、ここでは、動詞として使われて、「生活が成り立たなくなる」というような感じでしょう。

現在では、この単語は、侮蔑的な表現にあたる、と考える人もいるようで、あまり使わないほうがよいかもしれません。

それはともかく、ここで見たとおり、ロイロット博士には、ストーナー嬢と、その姉を殺害するだけの動機は十分にありそうです。

コメントは受け付けていません。