「分かち書き」というものがあります。
これは、「分けて書く」という意味で、たとえばローマ字などでは、
okaasan ga kyou dekake mashita
(お母さん が 今日 でかけ ました)
という具合に、読みやすくするために、細かく分けて書くことです。
絵本などでは、こう書かれていますね。
英語では、単語ごとに分けて書きますから、分かち書きという方法自体はありません。
日本語には、漢字やひらがな、カタカナがありますから、通常の文では分かち書きをしなくても、十分意味を通じさせることができます。
この「分かち書き」が、英語と日本語との音声の違いを、はっきりと示していると考えています。
He took the money out of his pocket and left the shop before the surprised shop owner thought of something to say.
(おどろいた店主が言うことを思いつく前に、彼はポケットからお金を出すと店を出て行った)
この文で、接続詞のbefore が聞き取りにくい。
..left the shop の後に b 音が来ていることはわかるので、but とか、b で始まる単語を言ってみるものの、正解にたどりつかない。
さらにfore の f 音もとれるのだけれど、この二つがなかなか結びつかなくて、before を思いつかない。
わたしたちは、ことばを発音するときにできるだけ意味単位で区切ろうとします。
この文でも、早口に一気に読んでしまおうとはしません。
極端にいえば、分かち書きのようないい方をしようとする、ということです。
ネイティブの方なら、先ほどの例文ならHe took the money までは、ほとんど切れ目なしに一気に読んでしまいます。
次の部分でもleft the shop be..あたりまで突っ走ります。
そうすると、before がbe と fore とが分離してしまったような印象になる場合があるのです。
その場合、ついbe で始まる一つの単語と、fore に近い響きのことばを探してしまって、先のエピソードのような事態がおこってしまうわけです。
わたしたちの考えでは、一語であるbefore が分離して読まれること自体、考えられないことですが、英語を発音していくうえでは、よく起こる現象なのですね。