以前ブログで、戦前の冒険小説作家、山中峯太郎の訳した「名探偵ホームズ」のことについてふれました。
今日は、最近手に入れた、山中版ホームズのお話しをしてみたいと思います。
子どものころに持っていた山中ホームズは「深夜の謎」一冊きりでした。
先日、古本屋の店先でながめていると、ポプラ社文庫のホームズものが目にとまりました。
それが「火の地獄船」でした。
山中ホームズが、普通のホームズとどう違っているか。
ホームズ物語と言えば、語り手はワトソンというのが定番ですが、「火の地獄船」(原題「グロリア・スコット号」)では、ミス・バイオレット・ハンタが記述したことになっています。
さらにそれにつづく「奇人先生の最後」(原題「マスグレーブ家の儀式」)では、ハンダ嬢が記述しているらしいのですが、それに関しての説明はありません。
末尾のところでは、ホームズのひとり言らしいセリフが出てきて、こう締めくくります。
「中探偵くらいにはなれるだろう、と思っていたぼくを、その後、『名探偵』にしてしまったのはワトスン博士だ。
彼が探偵記録を書いて、しかも、『名探偵ホームズ』と喧伝したものだから、ぼくも彼も有名になってしまった。ワトソンはそれでのり気になると、ぼくと彼の共同探偵談を、ずいぶん書いて、おくさんにまで書かせている。
そのワトソン博士がぼくの悲壮な最期を書こうとは。」
ワトソンの奥さんも、記述者の役を担った作品があるらしい。
これも初耳ですが、この締めくくりの後、ワトソンの記述により原題「最後の事件」、山中版では、「断崖の最後」が登場してきます。
もちろん、ホームズの性格付けも、スーパーヒーロー的な人物になっていて、読んでいると、ずいぶん違ったイメージになります。
残念ながら、現在入手不可能ですが、読んでみたいと思うでしょ?