澁澤龍彦集成I (澁澤龍彦)

「黒魔術の手帳」「毒薬の手帳」「秘密結社の手帳」といういわば西洋史のダークサイドというべき部分について、当時一般向きのものとしては限られた情報を提供してくれたのが澁澤龍彦氏の著作でした。
「夢野久作全集」の月報に中井英夫氏が書いているのですが、本来なら、日の光の当たらないところにいるべき著作が、いまはいくばくかのお金と共にレジに差し出せば、簡単に手に入ってしまう。こんなことがあり得ていいのだろうか。という雰囲気を感じさせる著作の一つと言ってよいと思います。

こうした知識から英語の世界に興味を持ち始める人も多いと思います。

いまでは、「恐ろしい西洋の歴史」のような著作が、コンビニでもごく簡単に手に入るようになりました。
ラグクラフトのクトルー神話の「神々」まで、コンビニの書棚に見られるのは、本当に驚きです。

さて、澁澤龍彦さんのこの3冊ですが、昭和30年代後半に、推理小説雑誌「宝石」や「EQMM」に掲載されたものに加筆をしたものだということです。

こうした知識は、なかなかまとまった本もなく、あっても、それなりの系統だった形での記述がなされておらず、興味本位にまとめられているケースが大部分。
そうした意味で、当時とても貴重な読み物であったことを覚えています。

集成を手に入れた後、澁澤氏の全集が出され、これも購入しました。
それでも、この桃源社版は、活字の大きさや、手触り、大きさなどの点で読みやすく、こちらに収録されている作品は、集成版で何度も読み返したものです。

わたしたちがある作品なりを愛読するとき、その本そのものの持つ特徴、手触りだったり、紙質、大きさ、重さ、こうした要素が占める部分もすごく大きいと思います。
これは文芸作品に限らず、辞典などにもいえることで、またいずれ、詳しくお話ししたいと思っています。

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