推理小説を愛読される方なら、エラリー・クィーンの名前を一度は耳にされたことがおありだと思います。
耳の聞こえないシェイクスピア役者である、ドルリー・レーンの活躍する「Xの悲劇」をはじめとする4部作、「ローマ帽子の謎」「フランス白粉の謎」などの国名シリーズ、「災厄の町」などの中期作品などの作品があります。
いずれもそのトリックのユニークさなどで驚かされるクィーン作品ですが、実は作家エラリー・クィーンには、もう一つの顔があります。
それは作品収集家としての顔です。
世界にも類を見ない、というクィーンの推理小説コレクションは有名です。
そのコレクションを、クィーンは独特な形で「世界の財産」にしようと試みました。
クィーンは、自分の持っているコレクションから選びぬいた作品で、アンソロジーにも収録されていない、それでいて名作の名に恥じない短編小説を集めて毎月雑誌を出すことにしたのです。
それが、「エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジン(EQMM)」です。
ハヤカワ・ミステリを出していた早川書房が、その権利を手に入れて、日本版のEQMMを出しました。
現在では、「ハヤカワ・ミステリ・マガジン」になっているこの雑誌の、はじめに出された3冊をそのまま復刻したのが、タイトルの本です。
当時、あまり知られていなかった作家、エリア・カザンとかスタンリィ・エレンなども出ていますし、クリスティやカーといった大物も顔を出しています。
巻末の広告がグレアム・グリーンの「おとなしいアメリカ人」で、単行本の値段が290円だったりしますから、時の流れを感じさせられます。
ちなみに私は、この本をある古本屋さんで手に入れました。500円でした。