クリスティ短編全集2

アガサ・クリスティというとカリカチュア的な名探偵、エルキュール・ポワロや愛すべき老婦人、ミス・マープルといったテレビ化されたミステリでおなじみのイギリスを代表する推理小説作家。

「そして誰もいなくなった」や、「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺人事件」といった、奇想天外な作品でも有名で、映画化されたものもたくさんあります。

東京創元社の推理文庫からだされている「クリスティ短編全集」の第2巻は、本国で出されたポワロを中心とする短編集(それでもポワロではない探偵役が活躍する表題作をもつ)にそれ以外の短編を組み合わせて、日本独自の編集で生まれた本です。

クリスティ作品は、多くの場合、終わりがあわただしい感じになってしまうことがあって、短編では特にその傾向が強くなります。

推理小説ですから、犯人が分かり、トリックが解明されてしまえば、お話としては完結で、そういう点、落語に似ています。

特に短編の場合、だれがやったのか、がわかれば、読者にも、どうやってやったのかの主たる部分は理解できてしまうことが多いために、こうしたいんしょうをうけるのかもしれません。

この本は、出版された当時、一度は読んでいるので、すべて再読でしたが、そのトリックなり犯人なりを覚えていたものは一つもなく、そういう意味では、あらためて楽しむことができました。

短編だと、人間関係などを詳しく述べている暇がなく、そのため、ダミーとなるキャラクターもほとんどいません。限られた登場人物の中から、犯人を選び出すわけですから、描写もトリックを正当なものに見えるギリギリの分量の抑えられます。
それでいて、トリックを見透かされないように、工夫しなくてはならないのですから、短編作家は本当に大変だと思います。
今回も、クリスティの職人芸を味わうことができ、楽しく過ごしました。

コメントは受け付けていません。