吉川英治・作の「宮本武蔵」は、日本で最も人口に膾炙した小説の一つであるといってよいでしょう。
実際には、あまり歴史的記録としては残っていない新免武蔵という人物に仮託して、吉川氏が、自分の日本人としての生き方の理想を注ぎ込んだこの小説は、版を変え、またTVドラマ、映画、コミックなどの形式をとりつつ、脈々と私たちの間に根っこを広げています。
最近では、「バガボンド」というコミックの形式で、多くの読者を獲得しているようで、その不死鳥のような作品の生命力には目を見張るものがあります。
英語の達人として知られる松本道弘氏も「宮本武蔵」に大きな影響を受けた方の一人です。
松本氏の初期の著作である、「入門英語道場」(のちにあらため「英語道場」創元社)を読むと、武蔵と又八という「武蔵」のなかで重要な役割を占める2人の登場人物が活躍しています。
今回、表題に挙げた「MUSASHI」はCharles S. Terryという方が全訳した吉川英治版「宮本武蔵」です。アマゾンで調べてみましたが、残念ながら現在は絶版になってしまっているようです。
実は2-3日まえに昔の愛読書を引っ掻き回して、ようやく見つけ出しました。
原文と比較してよくわかるのは、直訳というより、メッセージを伝えることを中心に訳された英文で、非常に読みやすいということです。
しかも、原作は、新聞に連載されていたものですから、次々と小さな山場があって、飽きさせません。
こうした本を読むことで、英語の力が身についていくなら、非常に楽しいことで、ぜひ復刊を望みたいものです。