英語で考えるとはどういうことか①
私たちが英語の勉強をしていた時代は、ちょっと独特の時代だったのかもしれません。
当時、私たちが非常に関心を持っていたのは、「英語で考えることは可能か」というトピックでした。
アポロの同時通訳者をつとめ、その後は国会議員になる國弘正雄先生が、テレビ英会話上級の講師として活躍されていました。
最初はスキットとよばれる寸劇を見て、表現などを練習するという、ごく普通の英語番組でしたが、やがて、大きく変化していきます。
それは、トークショーと呼ばれる、英語で、当時の一線の作家や政治家、その他の人たちと直接会って、話をするというスタイルのものを導入したことでした。
これは、当時の新しいスタイルの「生きた英語」レッスンの先駆けでした。
期を同じくして、English Journal といった、英語の生トークを売り物にした、テープ+マガジンという教材+月刊誌という雑誌なども生まれてきます。
そのまえに、一時期、ラジオ英語会話の松本亨先生が訴えた、「英語で考える」が一つの時代を象徴する言葉になりました。
そして、トークショーのころに國弘先生が「英語で考える」は神話、というテーゼを打ち出して、ひとつの時代を築き上げます。
その後も、英語を学ぶ人たちの間で、ときには顕在化し、また時にはひそやかに、「英語で考える」とはどういう意味なのか、と語られていたものでした。
この「英語で考える」という言葉の旋風により、英語の学習ブームも煽られて、大きなマーケットになっていきます。
さらに中津僚子さんという方の書かれた「なんで英語やるの?」が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞することで、時代としては一つのピークを迎えるのです。