アメリカの臨床精神科医師からの問題提起

「トランプ氏が大統領に選出された数日後、何人かの患者が、不安のあまり、私のもとに電話をかけてきた」

こうして始まるのが、ニューヨークタイムズへの寄稿です。

執筆者は、Richard A. Friedman 氏で、Weill Cornell Medical College の臨床精神治療の教授であり、またこの大学の付属クリニックの責任者でもある人物。

この電話の内容とは?

They were not just worried about the direction President-elect Trump might take the nation, but about how they were going to fare, given their longstanding and serious mental illnesses.

「彼らが心配しているのは、単に新大統領のトランプ氏がどういう方向に国家を導いていくのか、だけではない。彼らの長期にわたる深刻な精神障害を考えると、どのようにその費用を払っていくべきかについて心配しているのだ」

As a psychiatrist, I wish that I could be more reassuring to my patients during a highly stressful political transition, but in truth, they have reason to worry.

「心理治療士としては、このストレスの多い変化に対して安心させるようなことを言ってあげられないものか、と考えるけれど、事実、彼らの不安には十分な理由がある」

トランプ氏は、Affordable Care Act(医療保険に関する法律) を廃止して、取り換える、と約束しており、彼が厚生省にあたる部署の大臣にあたる、長官に選んだのは、オバマケアという貧困層の医療費用削減に貢献する法に強硬に反対してきたトム・プライスだ。

2010年の法律は、およそ2千万のアメリカ人、特にメンタルヘルス(精神病)と薬物濫用の治療の費用の支払いをカバーしてきた。

現在、アメリカには4360万人の心理的な病気で苦しむ人がいて、1630万人のアルコール依存症にあたる人たちがいる。

こうした人たちは、この法律が可決するまで、不安定な医療資金援助の対象にしかなれなかったり、全く援助が与えられなかったりした。

オバマケアは、こうした状況を大きく変えて、精神的な障害を、がんや心臓病と同じように、治療を受けることができるようにしたのだ。

それが、いま、トランプ氏のアメリカで、ふたたび、治療を安心して受けることができないようになりつつある、というわけなのです。

日本は、世界でも珍しい国民皆保険を採用している国でもあり、またイギリスなどのように、歯科だけが保険から外れていたり、といった問題も少ない。

そういう意味で、わたしたちは、保険のありがたみ、医療を安く受けられるということに対する評価が軽いような気がします。

たとえば、イギリスでは、大人でも自分で虫歯を抜いてしまう人がかなりいる。

レストランなどでも、おそらく痛む歯を自分で抜いたせいで、口から血を流しながら食事している人を見かけたりする。

こうして考えてみると、トランプ氏を選んだプアホワイトと言われる人たちが考えている「アメリカ像」とは全く違った方向に、アメリカは、舵を切りつつあるのかもしれない。

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