タイムの経済や政治の記事を読むときにいつも心がけていることがあります。
「人間がやっているものである以上、人間臭いものなのだ」
ということです。
実戦カラテ界の巨人である極真会館もまた、血も肉もある人間たちの集まりでした。
むしろ、体力に自信のある人たちの集まりであるだけに、パワー、肉体的なものであれ、政治的なものであれ、このパワーに対するこだわりも、人一倍あるのでした。
まさにそう考えさせる、分厚い本です。
大山総帥がなくなった後、ほとんど時間をおかずに、内紛の種がまかれてしまいます。
そして、遺言書に書かれていた「松井章圭氏を2代目にする」という大山氏の意志とはかけ離れた方向に事態は進んでいきます。
執筆されている方は、マスコミ界でもいち早く、松井氏の支持を表明した、とされる小島一志氏なので、全体のトーンとしては、松井派に近いところにあるのはやむを得ないかもしれません。
それでも、できるだけ多くの方に取材を重ねて書かれた、という自負を語っていらっしゃる通り、対立組織であった、「支部長協議会派」の内情も詳しく描かれています。
わたしたちは、どうしても執筆者の側に立ってしまいがちになりますが、ここで大切なことは、だれが、どう行動したか、よりも、それぞれの人たちの持つ、本能的なデーモンのようなもの、権力という魔物の恐ろしさ、といってもよいと思います。
読者として、客観的な立場であれば、透けて見えるような小賢しい工作も、当事者として、大きなうねりの中にあれば全く見えてこないというのはよくある話です。
そうした意味で、わたしたち、だれにとっても学ぶものの多い本だと思います。