猫色ケミストリー

ある日、突然、理系男子であるあなたが、女性のからだの中に入ってしまい、また理系女子のあなたが猫になってしまう。そして、・・たぶん・・理系男子足るあなたのからだに入っているのは・・猫!

というファンタジーっぽいおはなしが「猫色ケミストリー」。
作者は、宝島社の「このミステリーがすごい!」大賞で優秀賞に輝いた喜多喜久さん。
本に書かれている「有機化学ラブコメ×ミステリー」というキャッチフレーズが、まさにあてはまる小説です。

映画「転校生」の原作になった山中恒「おれがおまえで、おまえがおれで」だけではなく、人格(性別)入れ替わりものはエンターティンメントの世界ではよくある話。
「転校生」では男子学生と女子学生とが転換してしまうし、ロアルド・ダールの「ジェニイ」では猫と男の子が転換してしまう。

エンディングも、「転校生」ではもとにもどるけれど、「ジェニイ」ではそのままの終了。

こうした、【手あかのついた】状況を、いかにおもしろく演出するか、が作者の腕の見せ所といってよいでしょう。

ここでの工夫は、ふたつ。
一つはもちろん、3人(2人+1匹)の変身騒動。
猫になっちゃった女性の先輩、女性になっちゃった理系男子はコミュニケーションがとれるし、変身に至った経緯も確認できるのだけれど、猫の意識の入った男子は・・?

もうひとつは、論文の締め切りが迫っているため、その先輩のために実験を続ける理系男子なのだけれど、研究室で、何かおかしなことが起こっている・・このミステリーを解決すること。

というわけで、一味違うたくみなさばき方に、感心してしまいました!

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