いま、タイトルに上がっているように、私の手元にあるのは、コナン・ドイル「緋色の研究」(創元版)です。
じつは、出版権の関係から、以前は、新潮文庫以外では、「シャーロック・ホームズの事件簿」を翻訳することができず、このため、完全版シャーロック・ホームズは長らく新潮文庫版以外では、実現することがありませんでした。
以前、このコーナーでもお話ししましたが、私が子供のころなじんでいた「緋色の研究」の山中版、「深夜の謎」では、1部にあたる、ワトソンとホームズが対面する部分が、後ろに来てしまい、2部の、ジョン・フェリアと、姪のルーシーが、砂漠から命からがら脱出して、モルモン教徒に加わり、指導者のブリガム・ヤングの下、厳しい支配のもと、教団の幹部からの嫌がらせをうけ、命を奪われるシーンが、冒頭に来ています。
そのため、私が、別のヴァージョンで読んだ[出会い]までにずいぶん時間がかかってしまいます。
実は、このために、私はしばらく、山中版ホームズを敬遠してしまい、別の版に走ってしまうことになります。
たまたま、ホームズものに、全く別の漫画版もあって、このなかで、なぜか、冒頭、ホームズが、棺を開けると、蝶がたくさん飛び出してくる、というものがありました。
こちらと話がダブってしまい、(というのも、原作には、そんな話が全くなく、後で、下を探すのに、無駄な時間を使ってしまいました)ますます混乱したのです。
結局、深夜の謎を、読み返したときに、この、1部と2部との取り違え、というか、順番の狂いに気付いて、あらためて読み直して、ストーリィの全貌を知ることになりました。
[床屋のお兄ちゃん]からも、変だ、変だ、といわれて、文庫本で読むことを勧められ、緋色の研究を読んで、ようやく納得する、ということにもなりました。
なぜ、山中本が、こうした形になっていたのかは、いまだに謎で、その他の長編は、そういう改変は行っておらず、全く抵抗なくオリジナル通りの出来なのでした。
あらためて、深町眞理子さんが、もともと創元から出されていた阿部知二訳を、あらためて全訳されたことで、わたし自身も、もう10回目以上になる、読み返しを行いました。
私が一番好きなのは、緋色の研究の1部の部分なので、あらためて深町訳を読んで、やっぱりこの順番でなければだめだよな、と思ったものです。
それでも、新しい深町訳は、読みやすくて、その他の訳から見ても、わかりやすい訳文でした。
ちなみに、現在出版されているホームズの訳では、そのほとんどに、当時の出版物に付されていた挿絵が添えられています。
新しく出された山中版復刻本には、採用されていませんが、創元社の深町さんの訳本にも、ジョージ・ハッチンソンの挿絵がついています。
これはこれで、なかなか味わいのあるものですが、後年の挿絵に比べると、同も落ち着きがよくない。
できれば、挿絵も、今の日本の画家によって書き直されないかな、と思っている私です。
というわけで、今日は、なんだかまとまらない話になってしまいましたが、ここまでにします。
読んでくださってありがとう。