Pray draw up to it ってどういう意味?
前回に続いて、ホームズ物語からの引用です。
ホームズにたたき起こされたワトソン。その理由はなぜか、というと、朝早くにやってきた依頼人です。
その依頼人にホームズが話しかけます。
“Good morning, madam, ” said Holmes, cheerily. “My name is Sherlock Holmes. This is my intimate friend and associate, Dr. Watson, before whom you can speak as freely as before myself. Ha, I am glad to see that Mrs. Hudson has had the good sense to light the fire. Pray draw up to it, and I shall order you a cup of hot coffee, for I observe that you are shivering.”
少し長いのですが、
「おはようございます」とホームズは元気よく言います。
「私の名はシャーロック・ホームズです。これは、私の親友であり、仲間のワトソン博士。
博士の前では、私の前にいらっしゃるのと同じように、自由にお話しください。
ハドソンさんが、気を利かせて、暖炉の火をつけてくださいましたから、Pray draw up to it.
すぐにあたたかいコーヒーを頼みますから。震えていらっしゃるようですからね」
ワトソン博士を形容するのに、intimate を使っています。
このことばは、最近では、肉体関係があることを思わせる、ということで、あまり使わないように、と注意されたりする言葉ですが、この時代には、そんなことはなかったようですね。
さて、Pray draw up to it.です。
Pray をのぞけば、「それ(=暖炉の火)に近づく」ということでしょう。
Prayは、動詞なら、「祈る、(物事を)強く願い求める」
特に他動詞で、「(命令文・疑問文で;副詞的に)どうぞ、おねがいだから(=please)」が正式、古、の注釈つきで出てきました。
念のため、齋藤秀三郎の「熟語本位 英和中辞典」の pray の項を引いてみました。
③命令法 願わくは、何とぞ とあり、Pray consider という例が出ていました。
訳は「なにとぞ、ご熟考あれ」
というわけで、ここでは「どうぞ、暖炉の火に近寄って(温まって)ください」ということでした。