ホームズ「まだらの紐」から
シャーロック・ホームズはある朝、ストーナーという若い女性の訪問を受けます。彼女の話だと、双子のお姉さんが、「まだらの紐!」と叫んで、原因不明のまま亡くなってしまったとか。調査依頼を受けたホームズの家に、彼女の義理の父、ロイロット博士が登場し、暖炉の火書き棒を捻じ曲げて、ホームズに「かかわるな」と警告します。警告を受けたホームズは呵々大笑し、「スコットランドヤードの犬とは言ってくれたものだ」そして、ロンドンの弁護士会の事務所に出かけると、ロイロット博士の経歴や、ストーナー家の経済状況を調べるのでした。
というわけで、ストーナー家の資産についての文章です。
The total income, which at the time of the wife’s death was little short of L. 1100 is now through the fall in agricultural prices not more than L. 750.
「総収入は、(ロイロット博士の)妻(つまりストーナー嬢の母親)が亡くなった時には、1100ポンドにちょっと欠けるくらいだったのだが、いまでは、農作物の価格が下がっているから、せいぜい750ポンドといったところだ」
Each daughter can claim an income of L.250, in case of marriage.
「それぞれの娘が結婚したら、250ポンドをもらうことになる」
ここで claim と言っているのは、旅行のカバンの claim tag とおなじで、「自分の持ち物ですよ!」と主張することです。
母親の遺言で、ストーナー嬢とその姉には、それぞれ結婚したらもらえる財産があったわけです。
It is evident, therefore, that if both girls had married this beauty would have had a mere pittance, while even one of them would cripple him to a very serious extent.
「したがって、もし二人の娘たちが結婚してしまったら、この男には、スズメの涙程度の金額しか残らなくなってしまうのだ。どちらが一人でも、彼にとっては、深刻な損失になる」
ここにはわかりにくい表現が続出します。
this beauty ですが、調べてみると、beauty には「反対の意を表す」という語法があって、「醜いもの、悪い奴」という使い方があるそうです。
例文でも、You got a real beauty of a black eye in the fight というものが出ていました。
「けんかで、君の目の周りには、ひどい黒あざができた」という意味です。
「美しい黒い目」ではないです。決して。