松本亨英作全集がなぜ素晴らしいか③

前回に引き続いて、登校途中に子犬を見つけてしまった少女のお話の後半を見ていくことにしましょう。

「考えると、私が拾わなければ、この子犬は誰かにいじめられるだろうと思いました」

生徒さんの訳。

To my thinking, if I do not pick it up, perhaps this puppy will be tormented by someone.

松本先生の添削説明。

この文の時制は明らかに過去です。しかし、このように、あたかも現在独り言を言っているかのように書くこともあり、そういう文章はそれなりに効果のあるものです。ただ、こういう書き方は、かなり核技術の進んだ人のやることだ、ということを承知しておいてください。そしてこのような場合には、I thought to myself, と書きだしてから後を続けます。

添削例。

I thought to myself, if I don’t pick it up, this poor puppy will be tormented by someone.

(this puppy を this poor puppy としたのは、作者の気持ちをさらにはっきりとあらわすためです)

そして、この作文の最後のパートはこうなります。

次の作文。

私は戻って、その子犬を家に持って帰りました。父は、いい子だ、と言って、私を褒めてくれました。

生徒さんの訳文。

I went back, brought the puppy to my house.  My father said you are a good girl.

松本先生の添削説明。

I went back だけではよくわかりません。子犬のところに行ったのですから、I went back to the puppy と言ってください。

持って帰る、は、いつも bring という動詞を使うのではありません。この場合は take です。(bring は「こちらに持ってくる」というニュアンスになります)

家へ、は home だけでいいでしょう。

父は・・、は間接話法になっていますから、you are a good girl では困ります。

模範解答例。

I went back to the puppy, and took him home.  Father said I was a good girl.

前回からの課題の犬の話は、何とか一段落したようです。

ここで言いたいのは、こうしたストーリィのある英作文をしていくと、英文をひとつひとつ見ていくだけでなく、たとえば、it は何を指しているのか、とか、先ほど出てきたように、前の文ですでに述べられいる部分は、触れなくてもよかったり、あるいは、少し詳しく説明する必要がある、といった時代も起こってきます。

私たちは、一文一文を書いていくことだけにこだわるのではなく、連続的な文を、英語として成立させながら書いていくことに注意することも大切です。

それと同時に、できるだけ英英辞典を引くことで、それぞれの単語にどのような違いがあるのかを見つけ出していくと、より正確な、ふさわしい表現を見つけ出すことができます。

こうしたことを教えてくれるのが、松本先生の英作全集の大きな特徴だと言ってもよいと思います。

 

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