紛争地域への人道支援

果たして、紛争地域への人道支援は有効なのか。

このタイムリーな問題を取り上げているのが、2016年第2回の英検1級です。

Governments and NGOs frequently send food, supplies, and medical personnel into war zones in efforts to alleviate famines, refugee crises, disease epidemics, and other suffering resulting from armed conflicts.

政府、NGOはしばしば、食料、生活必需品、医療専門家を戦争地域に派遣しており、これは,軍事紛争によって生き起こされる、飢餓や、難民危機、病気の感染やその他の悲惨な状況を少しでも和らげるためである。

そこで問題になってくるのが、人道支援を紛争地域で行うことの是非論です。

わたしたちは単純に、苦しんでいる人がいるなら、その地域に救援を差し伸べることは必要だろう、と考えがちです。

このエッセイでは、94年のフツ、ツツ族の殺戮を例に挙げて、その危険について述べています。

One frequently cited problem is that the majority of aid organizations have a policy of maintaining a neutral stance.

よく取り上げられる問題は、大半の救援組織は、中立の姿勢を維持する方針を持っている、ということだ。

During the ethnic conflict in Rwanda in 1994, for example, a tribe called the Hutu slaughtered hundreds of thousands of members of another tribe called the Tutsi.

1994年、ルワンダで起こった人種間紛争のさなかに、フツ族という種族が、別のツツという種族の人たちを、何十万人も殺害した。

これは、扇動家たちのラジオ放送による暗示というか、指示があったようですが、こういう事件がありました。

Refugee camps were set up to aid victims of the massacres, but Hutus were also permitted to enter the camps.

難民キャンプが作られて、殺害の被害者たちを救援したが、フツ族もまた、キャンプに入ることができた。

They received food and supplies, and even used the camps as bases for carrying out military operations.

彼らフツ族は、食べ物などの救援物資を受け取ったが、同時にキャンプを、軍事作戦を遂行するための基地としても利用した。

あるジャーナリストは、もし、救援組織がだれがキャンプに立ち入っているか、もっと厳しく見ていたら、フツ戦争は、もっと早く終結していただろう、と論評をしています。

さらに、本来であれば、軍事を指揮している将軍たちは、軍事だけではなく、難民の食料や、生活場所などにも気を配らなくてはならない。

ところが、人道支援団体のおかげで、こうした部分の負担がなくなることによって、全力を軍事活動に投入することができる。

資金的にも、本来、国民に対する援助に振り分けられる部分が、全部、軍事に回されてしまうことで、より紛争を長引かせてしまっている、といっています。

わたしたちは、人道支援というと、すぐさま、良い事である、という判断をしてしまいがちです。

でも、いくら当事者が、善意であっても、悪意を持つ人に利用されてしまう可能性はいつでもあります。

少なくとも、そのような可能性を同時に視野に入れつつ、国際支援の問題を考えていく必要があります。

エブリの1級クラスでは、この問題を作文のトピックとして生徒さんにも考えていただいています。

セミナーでも、こうした国際問題のジレンマを考えていきます。

→12月最終週の英検1級、準1級の冬のセミナーでは、こうした問題に関する記事などを取り上げて、ディスカッションしたうえで、英作文として取り組んでいく、という試みを実践します。
ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

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