わたしが、小説などの「解説好き」であることは、すでにお分かりのことと思います。
ホームズについても、原典小説はもちろんですが、その周辺知識などに興味があります。
そうした興味を満たしてくれる本は、世の中にいっぱいありますが、この本は、著者の佳多山大地さんが、某私立大学で実際にミステリを講じた記録ということで読みやすい作品になっています。
ミステリを論じる場合に、ネタバレをどうするか、というのは永遠の課題です。
未読のひとが、トリックをばらされてしまっては、実際に読むときに、感興をそぐものです。
でも、ネタから一歩踏み込んで、小説を検証していこうとする場合には、使われているトリックを記述しないわけにはいきません。
そういうわけで、この本には、名作とされるミステリの、かなりの作品のトリックが、述べられています。
佳多山さんは、この本で、あまり翻訳ミステリになじんでいない、若者たちに、とりつきやすそうな作品から入ることで、海外の作品を読むことの抵抗をなくそうとしています。
さらに、年度の後半を、国産ミステリをとりあげることで、バランス良く日本のミステリにもなじんでもらえるようになっています。
日本のミステリも、優れたものは多いのですが、たぶん言葉の壁や、文化のわかりにくさなどもあり、世界に出ていっていないのは本当に残念です。
少しでも多くの作品が、英訳されて発信されてほしいと思います。