綾辻行人と有栖川有栖の「ミステリ・ジョッキー」

講談社の季刊雑誌「メフィスト」の連載です。
最終回の2011年Vol.2では、「ミステリ・ルール」でした。

この連載のすごいところは、現在ミステリ・シーンの先端を走っている二人の作家が、具体的な作品をとりあげて、参考にすべき点を語っているところですが、その作品も採録して読めるようにしてある、ということ。
ふつう、ある作品について論じている座談会などはよく見かけます。
でも、実際にその作品がすぐ手に入る状態になっていないことが多く、読んだものなら記憶を頼りに、読んでいないものなら「ふーん」と感じるだけです。
ミステリ・ジョッキーでは、実作を提示することで、座談会が具体的になり、ポイントが明確になるというメリットが大きい。

今回は、有名な「ノックスの10戒」「ヴァン・ダインの20則」、「ディクスン・カーの4つの黄金律」が出されて、さらに実作として鮎川哲也さんの「薔薇荘殺人事件」がついています。
3つのミステリ・ルールについては、量的にそれほどではありませんから、採録もよくありますが、最後の鮎川作品については、現在入手が容易なものなので、逆に採録されにくい、という事情があります。

評論集を読んでよく思うのは、論じられている作品が採録されていたり、要約だけでも掲載されていればいいのに、ということです。
そういう意味で、この連載は理想的な参考書であったと思います。
連載が終了してしまうのは、本当に残念です。

わたしたちが英語を勉強していくうえでも、文法的な説明の後、具体的な例文などが出てきたら、とてもわかりやすくなります。
文法項目それぞれについて、細かなルールの説明の後、例文が出されるのはよくありますが、一つのまとまったエッセイなどについても、具体例を出して、詳しく述べると参考になるだろうと思います。
ただ、むずかしいのは、よくない点を具体的に説明する表現です。
そういう点で、ふたり以上の教師が、英作文のエッセイを丸ごと、評価するシステムを持ち込むと、効果が高まるかもしれません。

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