サイモン・アークの事件簿

エドワード・D・ホックといえば、ミステリの分野で、短編の名手とされている人物ですが、その代表作といってよい『サイモン・アーク』の短篇集がまとまっています。

サイモン・アークは、年齢不詳、2000年も生きているということを口にしたこともある人物で、怪奇現象や、悪魔にまみえるために世界を渡り歩いていると言います。
ワトソン役をつとめるのは、名前の出てこない「わたし」で、有名な出版社の上級編集者を務めています。

このサイモン・アークと「わたし」のコンビが遭遇するのはどれをとっても怪奇色のあふれる事件。

過去において、盗賊に向けて投げられたナイフが消失。その後、何年もたって、同じような状況で、ナイフに刺さって死んだ人物。そしてそのナイフは、むかし盗賊に向けて投げられたものだった・・・!

毎晩のようにボートで、海に出かける裕福な男。ある夜、その男が出かけたまま帰らず、首に金髪の髪の毛をまかれて死んでいるところが発見される。乗船日誌によれば、美しい美人妖術師が海からあらわれてきたという。だとすれば、この男を殺害したのもその美人妖術師なのだろうか・・・?

それぞれ話の状況はオカルト的なのですが、実際の解決は、至って論理的なもので、きちんとした推理小説になっています。

その構成がかっちりしているところが、昔ながらのホームズ物語の流れを継承する短編小説集となっていて、初めて読んでもなんとなく懐かしい感じがします。

ホックの生み出した探偵は数多く、それぞれのキャラクターに合わせた作品の中で活躍しています。
残念なのは、作者ホックが2008年に亡くなってしまったことで、新作が読めなくなってしまったのは本当に残念です。

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