スピーチ、ディスカッションにふさわしい教材はないか、と昔読んでいた本をいくつか探し出しました。
日本英語教育協会の「新英会話教本」(英検1級レベル)松本道弘、E.カッケンブッシュ共著。1981年4月刊行。
この本の構成は、Part 1 Communication Part 2 Speech Part 3 Discussion & Debateとなっています。量的にはPart 1が一番多くて、ついてPart 2 最後のPart 3 がボリュームとしてはもっとも少なくなっています。
英検対策本の一つとして出されたもので、松本先生のカラーがやや薄まっていて、その分、さまざまな読者に受け入れやすい構成になっていると言えます。
松本道弘先生は、英語学習を、吉川英治の「宮本武蔵」のように、講談というか、読み手の心を燃え立たせるものに置き換えるのが非常に巧みです。
最初の著書ではないかと思いますが、創元社の「入門英語道場」でも、英作文という手法で、英語道場という研修の場をめぐる、武蔵くんと又八くんの葛藤を描き出しました。
私自身、英語の使い方の表現よりもむしろ、この葛藤ぶりを楽しみに、作文演習に取り組んだものです。
今回の「英会話教本」では、そうした直接的な葛藤はありませんが、それでも、当時、一般的な考え方であった、「英語をマスターするなら海外でないと」などに対する反論や、「人生をゲームとしてとらえる」という英語的なセンスについて、わかりやすい絵解きをしてくださっています。
そういう点で、日本人が英語を学ぶ上で、ぜひ一度は考えてみておいて損はない、面白い教本になっています。
残念なのは、すでに絶版となってしまって久しい、ということです。
また装いを新たにして出していただきたい一冊だと思います。