「まだらの紐」から③
ホームズも、ここまでの調査で、ロイロット博士の動機があることについてはこういいます。
My morning’s work has not been wasted, since it has proved that he has the very strongest motives for standing in the way of anything of the sort.
「僕の今朝の仕事(弁護士会事務所に行って調べてきたこと)は無駄ではなかったな。というのも、これによって、彼には、こうしたこと(娘たちの結婚)を邪魔するだけの非常に強い動機があることが証明されたのだからね」
waste はもちろん、「無駄になる」という意味です。だからhas not been wasted というのは、「無駄にならなかった」ですね。
the very strongest motives は、ちょっと変に聞こえます。
私たちは、very という言葉は、最上級にはつけない、と学びましたから。
確かにその通りですが、いかにも「この動機は非常に強い」というニュアンスはうまく出ています。
語法的には、まずいのかもしれませんが、夏目漱石が、「さんま」のことを「三馬」と書いていたりするように、ことばは、その成長過程では、さまざまな用法、語法がでてくるようです。
まあ、コナン・ドイルも漱石と同じころの人ですから、そういうことなのかもしれません。
つぎにstanding in the way で、これは、「道に立っている」ということで、「邪魔をする」ということです。
anything of the sort は文字通りなら「そういう種類のこと」ということになります。
ここでは、ストーナー嬢の結婚のことです。
この欄では省略していることですが、実は、なくなったストーナー嬢の姉にも、もうすぐ結婚する予定があったのです。
したがって、ロイロット博士の企てていることは(事実だとすれば)義理の娘を二人とも始末してしまおう、という計画だということになります。