小鷹信光さんのこと①
コダカ・ノブミツさんをご存知ですか。
以前、テレビ放映されていた、松田優作の「探偵物語」の原作者。
ミステリ分野、とくにハードボイルドミステリの大御所評論家。
ハヤカワ・ミステリにある、ペイパーバック記念コレクションの収集家。
そして何より、「マルタの鷹」「郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす」などのミステリの翻訳家。
翻訳教室講師。
さまざまな肩書を持つ小鷹さんがなくなったのは昨年の話です。
わたしも、学生時代から、小鷹さんの書かれた「パパイラスの舟」をはじめとするエッセイ集や、
ミステリ研究論文などを愛読してきました。
先日、古本屋に立ち寄った際、小鷹さんの「翻訳という仕事」という著作が、安く売られているのを見つけて、すぐに購入しました。
この本自体は、時代性もあり、載っている情報も今では古くなってしまっているため、復刻・復刊の可能性は薄いと思います。
ただ、小鷹さんが教鞭をとっていた、某語学学校の翻訳教室での生徒さんの傾向について、これは今でもあてはまる記述がありました。
いわく、
「文学関係の翻訳をやりたいと思っているのに、翻訳で文学を読んだ経験が全くない」
「ミステリ関係の翻訳をしたいと言っている割に、現在、海外ミステリの翻訳を載せている雑誌が(この本が出された当時は)2種類しかないことさえ知らない」
「翻訳教室を終了すれば、すぐに翻訳の仕事につけると思っている」
まあ、ボヤキと言えば、ボヤキですが、この関心の薄さ、というのは、いろんなところで見られる傾向だと思います。