鹿男あをによし(その2)

数年前にテレビで放送されていたドラマ『鹿男あをによし』。
最近、またDVDを見直しました。
原作を繰り返し読み、DVDも何回も見ているのですが、何となくほっとして、安心します。

本はよく読む方だと思うのですが、このところ、小説が、あまりに「リアル」で疲れてしまうことがあります。
悪い奴ばかり出てくるような小説を読んでいると、なんとなく、心がささくれだってしまって、あまり楽しめない。
その点で、突如、鹿に話しかけられて、「日本が大変な危機に陥っているから、手を貸せ」といわれてしまうこの作品は、ものすごくほっとするのです。

もちろん、『鹿男』にも、悪い奴が出てこないわけではありません。
ネタバレになってしまってもいけないので、ここで詳しくは書きませんが、日本の宝ともいうべきサンカクを横取りしてしまおう、という人物がいる。
このサンカクは、日本の命運を左右する重大なものなので、ひょっとすると、日本全体を犠牲にしても、自分の欲を満たしたい、ということになる。

日本全体の運命のかかった話なのに、舞台は奈良(ちょっとだけ京都)で、学校という社会からほとんど動くことはなく、鹿が話しかけてくる、半分おとぎ話の世界なのです。

原作では、堀田イトというヒロインが、主人公である「おれ」との間にロマンスは生じてきません。
テレビでは、原作で男性である人物を女性の綾瀬はるかに演じさせることで、そうした要素も取り込みました。綾瀬はるかという人は、コメディエンヌとしての素質が優れた人で、原作のテイストをくずすことなく、よりおもしろい作品にしていると思います。

サンカクが戻らなければ、日本中が大地震になってしまう、という3・11以後、笑えなくなってしまった設定のため、再放送の可能性はほとんどないのが残念です。
レンタルDVDがありますので、ぜひ見ていただきたく思います。

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