大山倍達の遺言

物事を作り上げていくのは、並大抵のことではありません。
まして、それが人間の組織であり、世界的なレベルで存在しているものだとすれば。

極真会館という空手の大組織があります。
従来の「危険だから相手には本当に当てない空手」とは違って、実際に当てる「フルコンタクト」という形で一世を風靡した組織です。

「巨人の星」や「あしたのジョー」で知られる梶原一騎さんが原作を担当した「空手バカ一代」の主役が、この大山氏です。

大山氏が亡くなって20年近くがたちました。
武道に関心のある方なら、現在、この極真会館がどのようになっているのか、ご存じだと思います。

もちろん、わたしは空手を自分でするわけでもないし、実際に極真会の人を知っているわけでもありません。

ただ、大山氏や、極真会の関連の書物を何冊か手に取ったことがあるにすぎません。

そのなかでも小島一志氏、塚本佳子氏共著の「大山倍達正伝」はドキュメントとして、質、量ともに読みごたえのあるものでした。
「正伝」が、極真会館の、いわば表の顔の実態を描き出して、それまでだれも書くことのなかった大山氏の姿をわたしたちの前に見せてくれたとすれば、今回の「遺言」はそれ以後、極真会がどのように分裂して行ったかを克明につづった記録といってよいでしょう。

もちろん、それぞれの人物が、実際に何を考えて、どのように構想したのかは、すべて闇の中の話で、わたしたちが読むことのできる話は、あくまで執筆者のおふたりの見聞きし、解釈されたことにつきます。

それでも、全日本、全世界というスケールの大会を開催して、いわば格闘技世界一という看板をもっていた大組織が、ここまで無残に分離してしまうことは本当に残念です。

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