科学捜査のドールハウス

2019年度第2回の英検に、科学捜査のドールハウスという長文問題が出題されています。

これは、現在の科学的な犯罪捜査が、そのようにアメリカに受け入れられていったのか、という興味深い論文です。

この問題の第2段落には、次のような一節があります。

Yet even with such a comprehensive array of forensic problem-solving tools, crimes go unsolved, the innocent are convicted, and perpetrators evade detection.

comprehensive = 広範囲の  array = 一連の  forensic = 犯罪学の、科学的犯罪捜査の

innocent = 無実の  convicted = 有罪判決を受ける  perpetrator = 犯罪者

しかし、そのような包括的な科学的犯罪解決の道具がそろっていても、犯罪は解決されないまま残ってしまい、無実の人が冤罪に苦しみ、犯罪者は捜査を逃れてしまう。

It takes training and analytical skill to draw correct conclusion from evidence; the large quantity of data available can also be overwhelming or misleading.

analytical skill = 分析技術  overwhelming = あまりに多すぎる  misleading = 間違った方向に導く

証拠から正しい結論を引き出すには、訓練と分析技術が必要だ。手に入るデータが大量にあると、かえってその量に圧倒されてしまったり、間違った結論に導かれてしまったりする。

Furthermore, as Frances Glessner Lee noted in 1952, “Far too often the investigator ‘has a hunch,’  and looks for and finds only the evidence to support it, disregarding any other evidence that may be present.

furthermore = さらに  hunch = 直感、予感、虫の知らせ   present = そこに存在する

さらに、フランシス・グレスナー・リーが1952年に記述しているように、「捜査員たちは、余りにも多く、

『カン』がひらめいてしまい、そのカンにあう証拠だけをさがし、見つけ出してしまう。実際には現場に存在する別の証拠には見向きもしないで」

Lee, a pivotal figure in the modern application of forensics, concluded that investigators needed better training in assessing all aspects of a crime scene, asking the right questions, and determining which evidence should be preserved for further examination.

pivotal = (事の進展に)きわめて重要な  modern application = 現代的応用 assess = 算定する、評価する aspect = (いろんな)面  determine = 決定する  preserved = 保存しておく

リーさんは、科学的操作法の現代的な応用におけるきわめて重要な人物だったが、彼女は捜査員たちが犯罪現場のあらゆる面を調査する、よりよい訓練を必要としていて、それにより、ふさわしい質問をし、そしてどの証拠が以後の調査のために保存されるべきかを決定することができなければならない、と結論付けた。

 

実は、いま、私の手元に、「探偵コナン・ドイル」という本があります。(早川ポケット・ミステリ1953)

この本は、名探偵シャーロック・ホームズの生みの親であるコナン・ドイルが、医学における師匠であるベル博士と、下町に詳しい女性作家、マーガレット・ハークネスの3人で、当時の大事件である、「切り裂きジャック」事件の解決に望む、という推理小説です。

この小説に、次のようなシーンがあります。

ベル博士は、写真を見ると、「この写真は遺体を完全に洗ってから撮ったものですね。遺体を動かす前の殺害現場の写真、それに被害者の衣服の写真も見られますか」

これにたいして、警部は、

「実はこの遺体、警察医が来る前に安置所に到着しましてね。貧しい市民を二人雇って肢体を扱わせているのですが、彼らが警察医に見せる前の肢体を洗い、服も廃棄してしまったんです。現場にいた上級警官の指示を全く守らなかったんですよ」

以上が、該当部分の一部を抜き出したものです。

当時のイギリスの警察では、実際の現場の保存の重要性や、殺人現場における遺体の状況などを観察する、などといった用件は、調べる方にもあまりなく、こうした状況が日常茶飯事だったようです。

英検の問題では、このあと、検死の技術を現場の捜査員に身につけさせるためにどのような方法が用いられたか、詳しく描かれており、大変興味深いものとなっています。

わたしが、英検の勉強を強くお勧めしている理由としては、以上のような、現実に即し、かつ、中身の濃い文章がいつも出題されている、ということがあげられます。

みなさんも、ぜひ、英検の問題集を開いてみてください。

こうした、とても面白い記事に出合って、映画や小説を楽しむうえでも、興味をかきたてられる内容があふれていますよ!

英検1級、準1級、2級の合格を目指す人のためのマンツーマン指導!は、ぜひ、

エブリ・イングリッシュ・サービスへ!!

   

コメントは受け付けていません。