今、私の手元にある、ぼろぼろの本は、高校のころから愛読してきた、松本亨(まつもと・とおる)先生の「英語会話イディオム集 増補版」といって、松本先生が、NHKで25年にもわたり、英語会話の放送をつづけてこられて、まとめられた英語のイディオム集です。
わたし自身が、高校生になって、松本先生のファンになり、テキストを愛読し、かつ、放送を毎日聞いていたころに、本屋さんでたまたま見かけて、購入した、懐かしの一冊です。
たとえば、次のような会話のやりとりが掲載されています。
Catch on =理解する
捕まえる、追い付く、というところから、わかってくるという意味になります。
Mrs. Tucker; Does it say “One man” on the front of the bus? What on earth does it mean?
Mrs. Takei; They usually have a girl conductor on a bus.
Mrs. Tucker; Oh, I get it. One-man busses have no conductors!
Mrs. Takei; That’s the idea. You catch on quickly.
Mrs. Tucker; Well, I just used a little imagination.
Mrs. Takei; Let’s go in here. I think we’ve walked enought.
Mrs. Tucker; We certainly have.
応用 1.Do you catch on? =わかる?
2.He caught on at last. =彼はようやく分かった。
3.She doesn’t catch on quickly, but she will. =彼女はすぐには了解しないけど、いずれはわかるだろう。
これで1ページ、かなりボリュームのある一連の会話と、例文がいくつか書かれているという構成です。
話題については、当時、市営バスの「ワンマン化」が進んでいたことで、外国からいらっしゃった方が、この「ワンマン」という言葉の意味が解らなくて、お友達に聞いている。これを説明するのが、日本人の主婦のかた、という組み立てになっています。
ごく自然で、わかりやすく、また、こういう風にお話すればいい、というモデルのような会話になっています。
このあたりが、松本亨先生の独擅場で、英会話教材の達人と言える部分だと思います。
ありきたりのパターン的な会話ではなく、むしろ重なる体験から生み出された自然な例文ですし、それぞれの英文に、難しい表現が全くないところが親しみが持てると思います。
このような教材を、松本先生は、生涯に300冊近く、執筆され、出版されました。
もともと、ラジオの英会話の教材になっていたものなので、そういう意味で「よく練られた英文」の例と考えられます。
また機会があれば、松本先生の作品をご紹介させていただくつもりでいます。