泡坂妻夫「奇術探偵曽我佳城全集」結び方のコミュニケーション 2011年12月22日 2019年2月1日 わたしが学生だった頃、「幻影城」という雑誌がありました。江戸川乱歩にも、推理小説の評論集として同名のものがありますが、これはおそらくそれからとったタイトルだったと思います。島崎博というもともと台湾の方が、書誌家としての膨大なコレクションを背景に、昭和初期の「探偵小説」を採録していた、エラリークィーン・ミステリマガジンのような雑誌でした。この「幻影城」が、創刊2年目ころに新人賞をはじめ、その受賞者の… 続きを読む
花田深「妻は多重人格者」 2011年12月16日 2019年2月1日 恐ろしい話です。ある日、ご主人である著者とは関係なく会社を経営していた妻の借金を返済するように、という督促の電話が次々かかってきます。身に覚えのないことなので、花田さんは、対応に困ります。相手は、サラ金らしく、暴力団のような脅しをかけてくるものもあり、まともな業者ではなさそうです。妻に聞いても、らちが明かず、とりあえず、手持ちのお金で、払える分を払っていくのです。本来ならば、まずは銀行、つぎにまと… 続きを読む
好井裕明「差別原論」 2011年12月15日 2019年2月1日 「差別はいけない」「差別することは許されてはいけない」これは、だれでも認めることです。だからといって、差別がなくなるわけではありません。わたし自身、ニューズウィークや、ヘラルド・トリビューンなどで、日本にある差別についての記事が出ていたときには、積極的に取り上げてきました。そして、その解説をしていく中で、差別に関する書物も何冊か読みました。この本の中で、ある女性が、「差別があることを認めなければ、… 続きを読む
「一目惚れ」の不思議 2011年12月15日 2019年2月1日 竹内一郎さん、ペンネームを「さいふうめい」という方がいます。非言語コミュニケーションの専門家であって、またペンネームで「哲也 雀聖と呼ばれた男」というコミックの原作者でもあります。この方の書かれた『「見た目」で選ばれる人』という本を最近読みました。専門の「非言語コミュニケーション」について分かりやすく書かれてある著書なのですが、その中にとってもおもしろい項目がありました。一目惚れについてです。アメ… 続きを読む
新講談ホームズ奇談「火の地獄船」 2011年12月7日 2019年2月1日 以前ブログで、戦前の冒険小説作家、山中峯太郎の訳した「名探偵ホームズ」のことについてふれました。今日は、最近手に入れた、山中版ホームズのお話しをしてみたいと思います。子どものころに持っていた山中ホームズは「深夜の謎」一冊きりでした。先日、古本屋の店先でながめていると、ポプラ社文庫のホームズものが目にとまりました。それが「火の地獄船」でした。山中ホームズが、普通のホームズとどう違っているか。ホームズ… 続きを読む
占星術殺人事件(島田荘司) 2011年12月5日 2019年2月1日 江戸川乱歩賞に投じられながら、残念ながら受賞を逃した作品です。当時日本で唯一といってよい推理小説の賞として、乱歩賞は本格推理の与えられるものでした。ただ、その性格は、少しずつ変化しており、だんだんと社会派的な小説に与えられるようになりつつありました。「占星術殺人事件」は、横溝正史風の、まさに「おどろおどろしい血まみれの推理小説」でしたから、ある意味では、賞を与えられないのは当然の帰結でした。さいわ… 続きを読む
謎解き名作ミステリ講座(佳多山大地・著) 2011年12月4日 2019年2月1日 わたしが、小説などの「解説好き」であることは、すでにお分かりのことと思います。ホームズについても、原典小説はもちろんですが、その周辺知識などに興味があります。そうした興味を満たしてくれる本は、世の中にいっぱいありますが、この本は、著者の佳多山大地さんが、某私立大学で実際にミステリを講じた記録ということで読みやすい作品になっています。ミステリを論じる場合に、ネタバレをどうするか、というのは永遠の課題… 続きを読む
緋色の研究(ドイル)A Study in Scarlet 2011年12月2日 2019年2月1日 かの名探偵、シャーロック・ホームズが最初に登場する長編が「緋色の研究」です。医学に志していたコナン・ドイルですが、せっかく開いた診療所は閑古鳥が鳴いています。当時、暇をもてあましていた彼は、短編小説を書いては出版社に送りますが、採用されません。そこで、恩師ベル博士をモデルに創造したシャーロック・ホームズの物語を1886年に書きあげます。これもすぐに採用されたわけではなくて、1年間寝かされた揚句、戯… 続きを読む
緋色の研究のあらすじ 2011年12月1日 2019年2月1日 シャーロック・ホームズのデビュー作「緋色の研究」は、医師のジョン・ワトソン博士がロンドンで住むべき場所を探すところから始まります。友人から紹介された、奇人ではあるが悪人ではないシャーロック・ホームズ氏と同居を始めるのですが、当初から驚かされることばかり。まず、その教養の偏り具合。文学、哲学、天文学、政治学についてはゼロないし極めて薄弱。植物学については毒物一般には至って詳しいが、園芸に関しては無知… 続きを読む
シャーロッキアンたちよ! 2011年11月20日 2019年2月1日 シャーロッキアン、またはホームジアンと呼ばれる人たちがいます。シャーロック・ホームズ(ここではSHと表記します)の実在を疑わず、コナン・ドイルの作品を正典(カノン)とよぶ人たちです。彼らは、ドイル作品に描写されたSHにまつわるさまざまな事象を研究し、矛盾を暴き、さらにドイル(=ワトソン)の記述が事実を隠している(!)ことを推理します。有名なところでは、元タイムの記者であったベアリング・グールドです… 続きを読む