An Unquiet People

昨年の津波と福島原発事故で、多くの日本人が熱意のある反原発活動家になった・・という書き出しで、3月19日号のタイムは、3・11以後の日本について述べています。たしかに、復興計画は遅々として進まず、驚くべきことに義捐金も、まだ十分に行き渡っていない現状で、税金と電気料金が上がっていく、というのは、かなり理不尽な気持ちになってしまいます。というわけで、この記事の冒頭の部分を見ていきます。第1段落Chi…

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僕らが愛した手塚治虫2 二階堂黎人

名古屋に「まんがの虫」という手塚治虫さんのファンを中心としたマンガグループがありました。中学時代、このグループの代表の方から連絡がありました。手塚先生が、当時の松坂屋だったか丸栄だったか、百貨店にサイン会にいらっしゃる、というのです。そこで、前日から代表の方の自宅に泊まり込んで、当日は朝から名古屋駅で手塚先生の名古屋到着を待とう、というわけです。実際には、情報が錯綜してしまい、名古屋駅での対面はな…

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吉川英治「新・平家物語」

現在、愛読している小説がこれ。ちょうどNHKが同じ人物を題材にした「平清盛」を放映しており、冒頭の父親とのエピソードが、自分の父親の思い出に結びつく部分があるからでもあります。はじめて父親から買ってもらった小説が「新・平家」でした。これは、車に乗っている時のちょっとした会話がきっかけになりました。「源氏物語」と「平家物語」との違いを聞かされていたので、読んでみたいという話になり、ある日、父が買って…

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エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジンVol. 1-3

推理小説を愛読される方なら、エラリー・クィーンの名前を一度は耳にされたことがおありだと思います。耳の聞こえないシェイクスピア役者である、ドルリー・レーンの活躍する「Xの悲劇」をはじめとする4部作、「ローマ帽子の謎」「フランス白粉の謎」などの国名シリーズ、「災厄の町」などの中期作品などの作品があります。いずれもそのトリックのユニークさなどで驚かされるクィーン作品ですが、実は作家エラリー・クィーンには…

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クリスティ短編全集2

アガサ・クリスティというとカリカチュア的な名探偵、エルキュール・ポワロや愛すべき老婦人、ミス・マープルといったテレビ化されたミステリでおなじみのイギリスを代表する推理小説作家。「そして誰もいなくなった」や、「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺人事件」といった、奇想天外な作品でも有名で、映画化されたものもたくさんあります。東京創元社の推理文庫からだされている「クリスティ短編全集」の第2巻は、本国で…

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真樹日佐夫さんのこと

年が改まってすぐに、真樹日佐夫さんの訃報をききました。真樹さんといえば、「巨人の星」「あしたのジョー」で有名な梶原一騎さんの実弟であり、ご自身、「ワル」などの原作者として、また「拳」などの小説家として著名な方でした。もちろん面識があるわけではありません。実は、わたしは、梶原一騎、真樹日佐夫さんの作品を折につけ読んできた、隠れたファンでした。体形的にも、経験から言っても格闘技系とはほど遠い、私のよう…

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サイモン・アークの事件簿

エドワード・D・ホックといえば、ミステリの分野で、短編の名手とされている人物ですが、その代表作といってよい『サイモン・アーク』の短篇集がまとまっています。サイモン・アークは、年齢不詳、2000年も生きているということを口にしたこともある人物で、怪奇現象や、悪魔にまみえるために世界を渡り歩いていると言います。ワトソン役をつとめるのは、名前の出てこない「わたし」で、有名な出版社の上級編集者を務めていま…

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能面殺人事件(高木彬光)

全編が手記という形で構成された、探偵がその活動を事細かに記載するという、(作中登場人物の)高木彬光によれば、「世界に類のない」推理小説。これは「刺青殺人事件」でデビューした高木氏が2作目に執筆した作品です。わたしにとっては生まれて初めて読んだ大人向けの長編推理でした。日本家屋で画期的な密室殺人を生んだとして話題になった「刺青」に対して、「能面」の評価は低いようですが、わたしとしては、これほど時を忘…

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子曰く(「し、のたまわく」)

「論語」の冒頭にある文です。「子曰く、学びて時にこれを習う、また喜ばしからずや」金谷治さんの『孔子』によると、「学ぶ」とは英語のstudy にも通じますが、新しいことを知ること。「習う」とはlearn 、つまり一つの物事をくりかえして習熟すること、だそうです。『新しいことを知って、それに習熟する。楽しいことだね』という意味になるそうです。長い間、聖人としてあがめられてきた孔子の言行録が「論語」であ…

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「バスカービル家の犬」

シャーロック・ホームズものには4本の長編がありますが、おそらくその中で一番評価が高いのが「バスカービル家の犬」だと思います。冒頭に、忘れられた杖の持ち主について、ホームズがワトソンの推理を打ち消していき、最後には持ち主自身が登場する、ユーモアあふれるエピソードがおかれます。ただ、お話自体は、怪奇的要素の詰まった、サスペンスフルな物語です。湿地帯の中に立つバスカービル家。当主は、門のところで、謎の犬…

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